平塚競輪の歴史
「湘南バンク」の愛称が付けられている平塚競輪場は、その名の通り湘南地域(神奈川県中部沿岸地域)の一角にある、海にも近い場所にあります。
同競輪場は、名だたる歴戦の勇者が練習場として使用していた名門競輪場であり、かつては、すんでのところでタイトル全冠制覇を逃した伝説の名選手・高原永伍(13期・引退)、「とんねるず」の木梨憲武さんと帝京高校サッカー部の同期生だった小門洋一(49期・引退)、いわゆる「法政二高カルテット」で有力選手に対抗した出口眞浩(63期・現在は川崎競輪場に所属)といった選手や、現役選手では遠澤健二(57期)、高木隆弘(64期)といった選手が、所属選手として名前を連ねています。
また同競輪場は、数年に一度、競輪界実力日本一決定戦であるKEIRINグランプリが開催されることでも有名であり、1987年の第3回大会以来7回の開催歴を誇ります(直近では2017年の第33回大会)。毎年5月のゴールデンウィークに記念競輪「湘南ダービー」が開催され(一部開催時期の変更及び開催されなかった年もあります)、過去には山田裕仁(61期・岐阜)、村上義弘(73期・京都)、深谷知広(96期・愛知)、浅井康太(90期・三重)といった有力選手が優勝しています。
歴史と伝統を誇り、過去何度も競輪界に語り継がれる名勝負が展開された平塚競輪場ですが、レースの傾向や特徴は、一体どうなっているのでしょうか?探ってみましょう。
予想の際に注意するポイント
平塚競輪場は400バンクの競輪場であり、みなし直線が54.2mと長くもなければ短くもなく、全国43競輪場の中でも平均的な長さであると言えます。また傾斜もキツくなく、カーブを曲がる際もハンドルをあまり切らずに走れるので、選手からすればいつも直線を走っているような、そんな感覚にさせられるようです。
これらに加えて、直線で急に伸びるようなコースがあるわけでもないので、選手個人の実力が反映されやすい競輪場だと言えましょう。
ただし、外的要因(昼と夜の寒暖差、バンク内の池が及ぼす湿気の影響、幾度となく塗り直しがされる舗装の影響)によって、ペダルを踏む際の重さに違いが生じることがよくあり、選手のコメントでそれらに言及されることがあるので、注意が必要です。
また同競輪場は、バックスタンド後方に相模川が流れていることや、海まで徒歩15分程度の所に位置しているため、海や川からの風が吹き込むことがあり、強く吹き込んだ日には、外にハンドルをとられることもあることから、当日の風の状況にも注意を払う必要があります。
決まり手データと傾向
1着と2着の決まり手ですが、
1着:逃げ16%、捲り30%、差し54%
2着:逃げ15%、捲り16%、差し32%、マーク37%
「逃げ」戦法の選手よりかは、「捲り」「差し」戦法の選手が1着になりやすい傾向にあり、2着の選手でも「差し」「マーク」の選手だけで7割近い入線率を記録していますが、走りやすいコースである分だけ後ろに位置する選手が、最後の直線などで前を行く選手を捕まえやすいという面に起因していると考えられます。
いずれにせよ、平塚競輪場では「差し」「マーク」といった、後方からの競輪を展開する選手に有利に働いているという点を無視することはできないでしょう。
直近の傾向とデータ
では実際直近のデータではどの様な傾向が出ているのでしょうか?
今月はじめに開催された記念競輪を例に挙げて、説明しましょう。
<12/2~4・F1シリーズ>
(12月2日[初日])
・1着:逃げ2、捲り3、差し6
・2着:逃げ4、捲り0、差し3、マーク4
(12月3日[2日目])
・1着:逃げ1、捲り6、差し4
・2着:逃げ5、捲り3、差し0、マーク3
(12月4日[3日目])
・1着:逃げ1、捲り2、差し8
・2着:逃げ5、捲り1、差し4、マーク1
(3日間合計)
・1着:逃げ4(12%)、捲り11(33%)、差し18(55%)
・2着:逃げ9(27%)、捲り4(12%)、差し12(36%)、マーク8(24%)
開催初日に雨が降った関係で、「逃げ」戦法をとった選手が残る傾向にあり、そのため「逃げ」の決まり手も増えた印象がありますが、天候が回復した2日目以降は、「差し」が決まりやすい展開が多く、特に3日目などは「差し」戦法の選手が1着に入ったのが8回を記録するなど、本来の傾向通りになっていることが立証されたと考えられます。
まとめ
これまでに取り上げてきた特徴と傾向をまとめると…
・「逃げ」戦法より「捲り」「差し」戦法が決まりやすい。
・直線の長さ・傾斜などが平均的であり、特に傾斜が緩くて直線を走っていると錯覚させるほど。
・近くに海と川があるため、そこから流れ込む風の強さによっては勝負の行方にも影響するので要注意。
・それ以外にも、バンク内の池が及ぼす湿度差や昼と夜の寒暖差によってバンクが走り辛くなることがあるので注意。
バンクの構造自体は標準的であっても、外的要因や天候等で勝負の行方が左右されそうなのが厄介ですが、そこが競輪の面白さ・奥ゆかさかもしれません。
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